おめでたうございますなど口口に氏神さんにつづく石段
短歌人3月号より その1 会員2
たうたうとお湯を注げり内定をやうやく得たる子のゆたんぽに 桐江襟子
うれしい!、のあとから浮き浮きとしてくる気持ちが、たうたうと、によく出てゐる。
ゆたんぽ、が好いなぁ。
ランドセル背負って出た家がぺちゃんこになるのを二秒待つ 願う 国東杏蜜
子供つて、ファンキーな想念を抱くものだ。
家がぺちゃんこになつたらさ、学校を怠けて、こつそり家に戻ることができないぢやないか。
餅つき機の餅つき会に子に孫の賑はひて八十七歳まだ頑張れさうだ 鈴木裕子
餅つき機の餅つき会、に作者のりちぎさが出てゐる。
毎月楽しみに読ませていただいておりまする。
元日の朝食小さなカズノコあり声かけしながら食事介助す 木村昌資
作者もまた、律儀な方のやう。
小さなカズノコ、や善し。
ついにして独り暮らしの気安さよ歩くだけ歩いて金木犀の香 高木文子
四句の九音に、気ままな散歩の喜びがつい溢れてゐる。
警察にコネがあるぞと脅しをり煮つけの鯖のやうな顔して 矢野義信
いやはや、どういつた状況?
煮つけの鯖って、思わずふきだしちまつた。
二十通ばかりの賀状をよろこびていくたびも読む友より師より
秋はおしまひ
短歌人2月号より その4 会員1
立ちなさいお茶が欲しいの午後二時の私がわたしに命令下す 青木みよ
わたしなどすつかりお尻が重くなつちまつて。
私も私に命令しませう。
土手焼とぬたを注文したあとの酒の肴に貪着は無し たかだ牛道
貪着は頓着と同語源、とある。
善き酒飲みであることよなぁ。
蜜柑かとおもえばごむぼーるの黄色、落ちてみちのへ 月は天上 鈴木杏龍
黄色い丸がいろんなものに姿を変えつつつひには空へ。
「、」も一時あけも利いてゐる。
菓子ならばどら焼きがよしどら焼きはうさぎやがよし兎年われは 太田青磁
ことば遊びや、善し。
コンタクトレンズ外せば君じゃない人に抱かれているかのように 鈴掛真
何時も見て、触れて、確信しておらずにはいられない。
見えないと不安でしようがない。
恋だ。
屈託のあるひとたちの集い来るオッズ場この淀みし空気の居心地良さよ 黑田英雄
競馬や競輪、ボートレースなどの場面か。
下の句、淀みし空気、で終わらず、の居心地良さよ、と言ふまるまる一句がついてゐる。
5、7、5、8、7、この混沌がオッズ場らしい。
人間に信頼をおく歌集なりにんげんが住む生き生きとしてすむ
ゆふやけが褪せゆく方へ車駈る『書架をへだてて』を読む会をへて
ひつぢ田は実りの色に明るめり時雨ののちに日差しがもれて
短歌人2月号より その3 会員1
上空を滑空しつつときをりは風に溺るる隼か、あれ 西五辻芳子
隼が急に高度を下げたり、旋回したりするさまを詠んでゐる。
結句、あれ、で読む者は上空を振り仰ぐ。
店内ではぐれた夫に手を振れどいたっずらっ子のように走って来ない 高木律子
ちよつと焦れてゐるかんじ、いいな。
苺ジャムの赤たっぷりのパンを食み牛乳をぐいぐいと飲む昼 古賀大介
苺ジャムの赤と牛乳の白を飲む。
ぐいぐい、の句またがりが力強い。
故里は冬こそよけれ雪降れば終日家に籠る幸せ 中田公子
ゲームもスマホもない時代のこどもであらうか。
楽しい遊びはいくらでもあつたよ。
この孫は衝動買ひなどせぬ子にて時かけ選りにしペンケース欲る 伊地知順一
丁寧な詠ひぶりや佳し。
孫を、直接的に褒めてゐないところも、好もしい。
橋下に鴨ら巡るを見てゐれば一昨年入水したくなりしこと思ひ出しぬ 來宮有人
出;いだ
一昨年入水したくなりしこと、の字数に溢れる想ひが読者の胸をうつ。
したたかに、うたれる。









